過度に適度で遵当な

在日日本人

転職、新海誠、発車メロディー、防災行政無線、アニメ評論 -単なる内容の羅列-

会社をクビになりましたが、1か月で別企業様から内定を頂きました。総合職兼管理職としての採用で、お給金は前職の倍以上です。そして東証プライム(旧東証一部)上場企業です。ですが、そんなことはどうだっていい。それ以上に嬉しいのは、これまでの研究が企業様から高い評価を頂戴し、しかも研究テーマが仕事になる!
研究を仕事にできる。理工系ならしばしばあり得ることかもしれません。しかし、人文系だと滅多にないのではないでしょうか。人文系修士かつ研究者の端くれとして、これ以上嬉しいことはありません。どんな仕事内容になるのか不安ですが、渾身の力で、それでいて地に足をつけて仕事をこなしていく所存です。


2019年にアニメ評論同人誌に投稿するため、1本のアニメ評論を書きました。ちょうど『君の名は。』の放映直後でしたし、小生の大好きな発車メロディーや防災行政無線が出てきて、「この監督の着眼点は本当に小生にそっくりだ」と感心していた時期でした。一方、作品中の発車メロディーや防災行政無線の使い方にちょっとした癖や既視感のある、監督の意図を感じる部分も多くありました。頭の中でもやもやしていたのを一気に吐き出したのが、以下のGoogleリンクからアクセスできる「『君の名は。』の音響共同体 都市の<音>と地方の<音>」です。
drive.google.com
掲載したアニメ評論同人誌は『アニクリvol.3.5 特集〈アニメにおける音楽/響け!ユーフォニアム+ 号〉』です。掲載から3年も経ているので自由に読んでいただいて良いかな、と執筆者としては勝手に思っています。
この評論同人を要約すると、レーモンド・マリー・シェーファーという人が提案した「サウンドスケープ」という概念を足掛かりに、アニメ音響には、聴き手であるキャラクタの耳が反映されているのではないか?と論じたものになります。それまでアニメにおける音響効果は殆ど議論されてこなかったこともあり、わりと面白いことを言えたのではないか、と考えています。本文はWordのA4ファイルで20ページほどありますが、ぜひお読みください。

その後、新海誠は『天気の子』を発表します。楽曲名を見てびっくり。曲名が「グランドエスケープ」。建築用語では「サウンドスケープ」と「グランドエスケープ」は対置的に使われます。どなたが命名されたか分かりませんが、東京を上空から一望する場面で再生される楽曲です。「景観」を意味する「グランドエスケープ」は場面に相応しい名前と言えます。と同時に、『君の名は。』で「サウンドスケープ」論を基に作品中の発車メロディーや防災行政無線、キャラクター、音を議論した人間からすると、「まさか読んでくれたメッセージ?!」と反応したくなるのもむべなることかな。

『天気の子』も小生の大学院修士課程在籍時と大学院修士課程修了以降の研究テーマである防災政策史研究を絡めた評論を書こうとしているのですが、『君の名は。』ほどのパワーが出ず、未完成のままです。そろそろ書き上げたいのですが、『すずめの戸締り』も自然災害を扱った作品であると聴きに及び、『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締り』を総合して、新海誠の自然災害観に迫る内容に変更しようかな、と思っています。『君の名は。』とほぼ同時期に上映された『シン・ゴジラ』を徹底的に批判しつつ、新海誠のナイーブさがむしろ、災害傍観者としての我々(=非被災者)にとって相応しいものである、と論じる設計になるのかな、と現在は考えています。お楽しみに。

ところで、余談なのですが、『君の名は。』における防災行政無線の呼びかけは中世日本の「神隠しの呼び戻し方」と共通項が少なくありません。で、音と「神隠しの呼び戻し方」を詳述した書籍は管見の範囲、1冊しかありませんでした。恐らく新海誠と小生は同じ書籍を読んでいます。それは
・笹本正治,1990-2008,『中世の音・近世の音―鐘の音の結ぶ世界―』
です。これが正しければ『君の名は。』における防災行政無線は呪術的手段だと言えるはずです。上記評論を読まれた方なら、評論中で神隠しについて突然言及したように思われるかもしれませんが、念頭に置いた元ネタがあります。
新海誠はしばしば己の読んだ書籍を公開する癖がありますので、それらの画像を探したら新海の書棚にあるかもしれません。

商業の書き仕事、学会研究報告、同人誌の締め切りが11月~12月にかけて5つもある中、新海誠と災害論も書くのは無理です。着手するとなると、来年以降でしょう。

いやはや、がんばります。