過度に適度で遵当な

在日日本人

夏コミの総括

開催から1ヶ月も経ちましたが、夏コミの総括です。

・用意した冊子は完売
おかげさまで「街頭時報の近現代」は完売いたしました。現在は冬コミの第2刷に向けて準備中です。第2刷での差し替えや記述増強についてはまた後日に。

・第1刷での訂正箇所あり
第2章に事実誤認、第3章に図表番号と脚注の漏れがありました。訂正PDFをアップします。

・増刷について
増刷にあたり、先の訂正箇所の訂正、さらに本冊子の記述変更と全体の再構成を行っています。

☆第1章
本冊子が歴史叙述を行うに辺り、理論的視野が不足しています。時報の機能変遷を担い手から見るにしても、各過程の二次資料をおってきたにとどまっていたように思われます。そのため、現在の第1章を序章、歴史叙述を行う理論的考察を第1章への改築を検討しています。

☆第2章
時報サイレン塔の記述に事実誤認がありました。第2刷ではこちらについて訂正します。また、時報サイレンが設置されていたと現在でも確認できる自治体で郷土資料を収集する計画を立てております。残念ながら、こちらは第2刷には反映できる見通しがありません。Webで補章として公開できればと思います。

☆第3章
記述増強をはかるための資料収集を行っています。埼玉県や静岡県の県政資料や自治体資料を主に見ており、防災行政無線政策の波及過程とミュージックチャイムの定着の事例を増やし、ケーススタディとしてブラッシュアップしていきます。

☆第4章
第1章の分割と理論的視野の更新にともない、第4章のとめの書き換えを検討しています。本冊子のなかで第4章の機能を冊子の論理全体に落としこめていない、必要のあまりない記述になっています。そのため、新第1章の内容にあわせて考察を改築したいと考えています。

・第2刷以降について
本冊子は「ファン・コミュニティでの歴史的知識の強化と各人連携の強化」を目的に作成いたしました。現在、ミュージックチャイムをはじめとした街頭時報の情報はYouTubeで数多く手に入ります。また、街頭時報の技術的な内容も同じくYouTubeで知ることもできます。ファンのみなさんのたぐいまれな努力によってなされてきたもので、一朝一夕にできるものではないと思います。一方で、防災行政無線の基礎的な情報やミュージックチャイムの波及過程についてはあまり知られてくることはありませんでした。
しかし、歴史的知識を増やしていくことで、街頭時報の性質や地域的かたよりなど、コミュニティの貪欲な知識欲の一助になり、「愛の鐘」など、現在もミュージックチャイムで現役の曲目の成立やその波及について、少しでも貢献できかな、と考えています。

しかし、媒体として紙を使うかは別の問題です。今回、冊子として発行できたのはこれまで自由に使えた時間やデータベースのおかげです。これまでとは使える時間やデータベースに制約のあるなか、冊子として発行するのは困難だと考えています。
第2刷、あるいは第3刷以降は、調査報告として今後もWeb媒体を利用していくことも検討しています。

・反省点
☆資料収集の課題
資料の過半を新聞記事や雑誌記事などの二次資料に頼ってしまいました。戦争前の時報サイレンに関して、国立公文書館、国会図書館、東京都公文書館、東京都立図書館、大阪市立図書館、大阪府立図書館、大阪市公文書館から東京市や東京府、大阪市の行政資料を集めましたが、当時の設置経緯などを細かく網羅することはできませんでした。いっぽう、新聞記事は豊富に残されており、ここから事実、文面から時報に対する当時の思惑を再構成していきました。
いっぽう、戦後の「愛の鐘」に関して、こちらも民間団体の活動であり、資料のアクセスに制約がありました。大阪市に関しては大阪市婦人協議会が残した記念誌やその他の区の記念誌から構成が可能でしたが、その他の地区では行政資料や新聞資料から断片を拾っていく他ありませんでした。さらに、地域防災行政無線・同報無線は、中央防災会議資料に探り当てられず、これに参加した研究者が当時発表した資料や回顧録から政策確立過程を収集せざるをえませんでした。また、ミュージックチャイムのケーススタディを東京都としたのも課題が残っています。
☆理論の問題
理論的パースペクティブが不十分なことも今後の課題です。これは苦手なことなので、勉強しつつ視点を固められたらと思います。


・今後のこと
冬コミに申し込みました。そのあとは資料性博覧会かな…と思います。街頭時報本を売りきったのちはまたヤマトBGMに戻るかな、とも検討しています。