営団ブザーとベリル

「ベリル」とは東京メトロ丸ノ内線中野坂上駅B線ホーム発車サイン音の曲名である。

申し訳ありません、この電車は、止まれません。

【職員の演技はあくまで職務遂行の姿でよい】

帝国の敗戦から3年。国内の資源は払底し、電車のまともな保守整備すらできないほどだった。
そして熟練の運転士の復員も進まず、まだ一人前とは決して言えない運転士が必死に運転していた。

そして昭和23年3月31日。近鉄奈良線の奈良発上六行き急行電車がついに破綻。制動できずに生駒の山を滑りおりて行った。
おりしも朝ラッシュのど真ん中、3両編成の電車は超満員のすし詰めだった。
生駒駅発車後、電車の制動が効かないと悟った運転士は乗客にこう言って頭を下げたという。
「申し訳ありません、この電車は、止まれません。」

話の枕に近鉄奈良線電車暴走追突事故を。
運転指令の指示で近鉄瓢箪山駅はわけもわからず、待避線に奈良発上六行き準急電車を入線させた。
待避線停車を確認後、転轍機を本線側に進路を戻す。
すると、転轍機が本線になったかならないかの間に、すさまじい勢いで暴走する急行電車が通過していった。
という話があります。
よく孔舎衛坂のカーブを曲がりきれたな。すごいなあ。
近鉄奈良線に乗るたびに思います。

安倍さん、安倍さんのおかげで近鉄快速急行じゃなく近鉄特急で奈良に行けるようになったよ。
大和西大寺駅もだぞ。

また話が長くなった。
『新幹線大爆破』の旧作と新作を見ました。
区別のため『(国鉄)』と『(JR)』とします。ぼくには非常に分かりやすい。

で、思ったのは、『(JR)』はJR社員役の俳優が変に演技しているから台無しになっている。
『交渉人 真下正義』のTTR八重洲線1072電車運転士のようにもう突き抜けていればいいんですが、『(JR)』は何というか、気張って緊張感を出そうとして逆に白々しくなっている。

これに気がついた出発点は『SpaceBattleShip ヤマト』*1の第一艦橋の面々です。各乗組員が慌てる感情を根底に置きながらも軍人としての冷静さを出そうとしている。結果何かが壊れている。なんでや。

これが不思議に思い、この感覚を掘り下げた。
どうやら変に演技づけることで場面をおかしくしてしまっているのだと確信した。
極めて訓練された軍隊では起こりえない。
さらに心理的動揺を抑えるために普段の行動をより深化して行動する現象は広く知られています。
集団的逃避は起こりえない*2

さらに観客論的に見ると、どの感情にフォーカスを当てればいいのか分からない。
一場面の感情はひとつしかない。
これを「第一艦橋現象」と呼んでいます*3
これだ。

『(国鉄)』を見ると新幹線指令の宇津井健や「ひかり」109号運転士の千葉健一はが努めて冷静かつ整然とした国鉄乗務員としてふるまっている。ふたりとも騒々しい演技で売っていたころです。
他の「ひかり」109号車掌や、国鉄上層部も同じくです。
もちろん宇津井健や千葉健一の見せ場を作るために慌ただしい場面はあることはある。ですが、基本騒がせる役は旅客です。

ただ、新幹線指令の宇津井健が国鉄東海道山陽新幹線の先行各列車乗務員に対して冷静に次々と指示を出し、各指令員がPTC*4をPRC*5からCTC*6に切り替え、浜松駅、豊橋駅、名古屋駅、名古屋駅留置線、岐阜羽島駅、米原駅、京都駅、新大阪駅、鳥飼車両基地に先行列車の待避が整然と行われていくシーンはよかったですね。これぞ運転指令。
あとは車内信号の指示に従い、列車を安全に停車させる仕事が待っている。
いやあ、かっこいい。これぞ国鉄。これぞガミラス。

『(JR)』はそれぞれの俳優が精いっぱいの演技をしたと思います。ただ、この「冷静に」「整然と」が欠け落ちている。

国鉄が軍隊だとしたらJRは人間も民営化してしまっている。

話がそれると、『交渉人真下正義』もTTR運転指令代表はあくまで運転指令として毅然とした態度でいる。
だから「お母さま」からの電話で観客の緊張がほぐれるわけです。

異常時の鉄道員を山と観察してきた結果思うに、そうした「パニくる」要素を徹底的に排除している。
国鉄北陸本線急行「きたぐに」号北陸トンネル火災事故で機関士は火災の火種となった食堂車の切り離し作業に集中していた。結果は言うにはばかれる。

後世に思うと、消火や切り離しはあとにして列車を南今庄駅まで待避させるべきではなかったか、現場付近で停止現示に従い停止していた503M列車急行「立山」3号大阪行きがいなかったらどうなっていたか…は言うは易し。黙れ。
なぜか。簡単です。拠り所となる業務規則があったからだ。それが旅客のいのちを守ると信じていたからだ。
現代の指令員や運転士もそこは変わらないと思います。

異常時の動きも普段の訓練と変わらないでしょう。
アトランダムに例を挙げると、ソビエト連邦による大韓航空機撃墜事件の際、大韓航空機を領空侵犯した国籍不明機として撃墜したパイロットの声は驚くほど淡々としている。
そして、先日のJR東日本東北新幹線郡山駅列車過走追突事故の際の運転士もそうだったんじゃないか。
いや、バイトの先輩や後輩で鉄道パーソンになった方々を見ると、そうだと確信しています。

『(JR)』はなんだか腑抜けてるなあ、と、つらつらと書きなぐった次第です。

ところで、ぼくは『動脈列島』の方が好きです。

*1:キムタクが古代進をやったあの映画です。

*2:これは災害心理学の成果です。

*3:ただ、キムタクは『ヤマト』が大好きなヤマトの大先輩です。抜擢されたことに大喜びで、少しでも古代進になろうと『ヤマト』を見まくったが、スタッフから「いつものキムタクで」とキツく言われて渋々諦めたそうです。なして。

*4:運行制御コンピュータ

*5:自動運行管理システム

*6:中央直接制御システム